映画『さがす』/最近の邦画おもしろい

映画『さがす』、評判が良くて見に行ったのだが、期待を超えて面白かった。

f:id:Ellie12:20220205215204j:plain

 

あらすじ:

原田智(佐藤二朗)は、中学生の娘・楓(伊東蒼)と大阪の下町で暮らしていた。ある日、彼は娘の楓に指名手配中の連続殺人犯を目撃したと告げ、その翌朝突然姿を消す。警察は本腰を入れて捜索してくれず、楓は自分の力で父を捜して歩く。ようやく日雇い現場に父親の名前を発見して訪ねて行くと、そこには全くの別人の若い男性がいた。
(yahooから引用)

 

 

映画は予想よりもスリラー映画。かつ人間の尊厳や家族愛も絡んで重厚な映画だった。

 

**ネタバレ注意!!

 

 

途中で、娘視点の物語から、犯人のアイツ視点に切り替わって、うわーなるほど〜と鳥肌だった。座間の連続殺人事件の犯人がモデルなんだろうか。

映画の途中から、もしかしてこれは…と嫌な予感がしたが、でもそこからまた予想がつかない展開で終始ハラハラ。

 

対照的な3人のキャラクターと演技が印象的だった。

・自分の快楽のままに人を殺し続ける謎の青年・山内。獣感があって良かった。目も感情がなくて人に関心がない感じ。俳優の清水尋也さんは初めて知ったが注目したい。

・ALSの妻を支えながら、彼女の苦しみに葛藤する父親(佐藤二朗)。ダメ親父だが、家族への愛は深い。知らず知らずに犯罪に手を貸したと知ったとき、もう後戻りできないと覚悟を決める。

・中学生の娘・楓役の伊藤蒼さん、初めて知ったが、表情がころころ変わってかわいらしくて魅力的。彼女が唯一の良心であり癒しである……最後の卓球シーンも素晴らしかったです。

 

画面が作り込まれていて、構成や見せ方に引き込まれるなあと思ったら、片山監督はやはり映し方に相当なこだわりを持っているようだった。

cinemore.jp

 

また、今回の映画では、話のポイントとなるアイテムが最初から最後までたくさん出てきます。ここはすごく意識していました。主となる登場人物が3人いるのですが、実は全員が同じフレームに収まることはありません。それをやってしまうと、映画の作り方としては失敗する可能性が高いんです。一つのカットで人物の関係性を分からせることはせずに、アイテムを駆使して人物の関連性を浮き上がらせていく。ここは自分の中での課題だったので、相当考えました。

なるほど、人物を一画面に映してわかりやすく関係性を描くより、カットを替えたりアイテム使った方がより立体的な作りになるのか。視聴者に対して、捉え方を「こう!」と提示するより、映像として面白いものになっている。

以下でも

時間軸のピースが完全に合わなかったとしても、そこは観客の想像力で補完できると思い、分かりやすさを促す装置としては使わないように気を付けましたね。

と発言しており、最近はわかりやすくしている作品が多いけど、やはりあーでもないこーでもない、ここはどういう意味だろう?と考える余地のある映画は楽しめると思う。

 

あと、海の映し方も好きだった。冷たくてひんやりした感じ。大阪の西成も舞台だが、その辺りの雰囲気の映し方も良かった。(一度しか訪れたことないけど。

 

気になったのは、娘の「さがす」は前半と後半で意味合いが違いそうだけど、後半はあまり探してる印象はなかったかも。

 

片山監督はポン・ジュノ監督の助監督をされていたそうで、サスペンス系の雰囲気は似ている。「韓国映画を観まくったが、言葉がわからなくてもいい映画は人物の関係性がわかる」と上の記事でおっしゃっているのも興味深い。

 

最近、よい邦画に出会うことが多い。あまり邦画を見てこなかったので、これから折を見て鑑賞したい。昨年観た「偶然と想像」(濱口竜一監督)も、とんでもなく好きな映画だった。ジャンルは違うけれど、「偶然と想像」は会話劇で、今回の「さがす」は構成で魅せる感じかな。 *何か、これは見とけ!という邦画があったら教えてください、、